
境界を越え、風の音に語を乗せて旅する神。軽やかに、しかし確実に必要な場所へ語を届ける。
移動と伝達を司る。
司る領域:
旅行・転職・人脈・発信・SNS・営業・言葉の仕事・プレゼン・情報発信・多拠点生活
「風標(かざしるべ)の語り手」
はるか昔、語霊の大地は、まだ「境界」が多く引かれていた。
谷と谷、民と民、語と語のあいだに、目に見えぬ壁があったという。
風さえもそれらを越えることができず、語られることのない声たちは、沈黙の空に消えていった。
そんな時代に、初めて“語を運んだ風”がいた。
その風に乗って現れたのが、守護存在ハバマリである。
ハバマリは形を持たぬ神であった。
誰かの声に呼ばれて現れ、誰かの心に届いたとき、はじめてその存在が知られるのだ。
彼女はあらゆる境界を越えて語を運ぶ旅の神。
声なき声、届かぬ想い、踏み出せぬ一歩を、そっと背に乗せて運ぶ。
ある日、谷を隔てた二つの村が争っていた。
理由は些細な誤解だったが、語が交わらぬまま争いは激しくなり、やがて橋は落とされ、道は閉ざされた。
だが一人の子どもが、夜空に向かってこう囁いた。
「どうか、この手紙が届きますように。」
その願いを聞いたのが、ハバマリだった。
彼女はその子の手紙を風に包み、嵐を越え、谷を越え、もう一つの村へと届けた。
届いた手紙には、ただこう綴られていた。
「わたしたちは、あなたの歌が好きです。」
それは、かつて交流のあった村の子どもたちが歌っていた歌への、素直な想いだった。
翌日、風は穏やかになり、誰ともなく橋の修復が始まった。
語が交われば、風は通う。
風が通えば、語は生まれる。
それこそがハバマリの役割である。
今でも、伝えたいけれど声にできない想いがあるとき、風の音に耳を澄ませばよい。
その風が、ハバマリの囁きであるなら、あなたの語はきっと、必要な誰かに届くだろう。
風は見えないけれど、確かにそこに在る。
それが語を運ぶ神、ハバマリの証なのだ。