
夢と霧の境に漂う水の守護存在。見えない世界の声を拾い、深層から癒やす存在。
無意識と感情の海に寄り添う。
司る領域:
夢占いや直感開花・ヒーリング・霊的保護・眠り・自己受容・創作活動・インナーチャイルドケア
「夢海(ゆめうみ)に沈む語」
夜と朝の境にある、霧深き湖――
そこには時おり、現実ではない何かが映り込むといわれている。
それは過去の記憶か、未来の幻か、それとも語られなかった“もしも”の世界か。
その湖を「夢海」と呼び、そこに棲まう巫をフヨウミという。
フヨウミは、語られぬ夢を紡ぐ存在。
影と水のあわいに立ち、心の底に沈んだまま名も与えられぬ感情を掬い上げ、静かに語へと変える。
彼女が現れるとき、湖面には光ではなく“揺らぎ”が広がる。
それは過去の傷、失った何か、閉じ込めたままの「本当の声」が波紋となって浮かび上がる瞬間。
ある晩、自らの夢に怯え続ける子どもが湖を訪れた。
夢の中で何かが崩れ落ち、声が届かず、いつもひとりきりになる――
誰にもその夢の意味を語れず、ただ眠ることを恐れていた。
湖畔で祈るその子の前に、フヨウミは現れた。
彼女は声を発さず、ただ子どもの手をとり、湖面を覗かせた。
そこに映ったのは、夢の中で崩れる塔。
その塔の下には、小さな詩が刻まれていた。
「わたしは、ひとりで声を閉じ込めた。」
フヨウミは指先で湖面をなぞり、その言葉を波へと溶かした。
その瞬間、夢の中で凍っていた声が溶け、塔が光に包まれて崩れるのではなく、開かれるように扉を開いた。
それからというもの、子どもは夢の中で語ることを覚えた。
語られぬ想いを、湖に預ける術を知ったのだ。
フヨウミは言葉のない語り手。
彼女の語は、夢という霧の中でしか響かない。
けれどそれは、現実よりも深く、心の奥底に触れる。
静かな夜、眠れぬまま目を閉じたとき、
もしも柔らかな水音と共に、心のなかで言葉が浮かんだなら――
それはフヨウミが、あなたの沈黙に語を灯した証かもしれない。