登場人物一覧
イリカ(主人公)
深林の血族(癒しの語り手)。沈黙の中で育ち、語ることに恐れを抱いていた少女。森と語の樹に導かれ、癒しの語を芽吹かせる。語を“聴き”、受け取り、“祈り”として継ぐことで、沈黙の声と向き合い続ける語り手。
リヒト(森の長老)
深林の血族の長老格。語の危うさと深みを知る守護者。イリカの導き手として、“語を育てるとは何か”を示す。沈黙と語の狭間に立つ存在として、語の循環の在り方を見守る。
シヲリ(かつての癒しの語り手)
沈黙の家の住人。癒しきれなかった痛みにより、自ら語を閉ざした老女。語を失うことの重みと、それでも祈りが残ることをイリカに伝える。
フユナ(語を封じた少女)
深林の民(潜在的語り手)。かつて語を持ちながら拒絶され、声を封じた少女。最終話で語の種を受け取り、“癒しを継ぐ者”として芽吹き始める。イリカの語が“他者へ渡される”ことの象徴。
サナト(風渡りの者)
風渡りの系譜。語を運び、響きの欠片を記録する旅人。風の笛で外の語を伝える。“語の輪”の境界を開き、イリカの語が森を越えて届くきっかけをもたらす。
アユハ(記憶の泉に眠る語り手の幻影)
深林の過去の語り手(故人)。語を紡ぐことに失敗したと感じ、記憶の泉に沈んだ祈りの存在。沈黙の中でも残り続けた“語の種火”を象徴する。
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用語集
語の樹(ことのき)
森の中心にそびえる、癒しの語を育む神聖な樹木。語の実が生まれる場所であり、語り手の成長と共鳴する。
語の実
語の樹が生む小さな果実。癒しの語や祈りが結晶化したもの。他者に渡すことで新たな語の芽吹きを促す。
癒しの語
深林の血族が宿す特別な語。痛みと祈りに寄り添い、言葉にならない思いを包む。必ずしも“言葉”であるとは限らず、沈黙・気配・所作も語に含まれる。
沈黙の家
過去に語を失った者たちが暮らす場。語の重みに耐えきれなかった語り手たちが身を寄せ、静けさの中で語を見つめ直す場所。
記憶の泉
語られなかった語、届かなかった想いが蓄積される神秘の泉。波紋に語の記憶が映ることがある。
空風の葉
風渡りの者たちが携える語の印。語が他者に届いたことの証。イリカの語が森を越えて届いた時、初めて授けられた。
未完の記憶の結晶
星降る記録者ルティアより渡された“語りきれなかった想い”の象徴。イリカが沈黙を超えて語を深める契機となる。
癒しの環(ゆいわ)
語の実や葉を編んで作る祈りの輪。語り手が祈りと共に語を渡す際に用いる儀式的構造。声の代わりに語の形を結ぶ装置でもある。